音楽療法コラム

2025/1/31

認知症になっても失われないもの:感情そして音楽①

音楽療法士資格更新のためコツコツ受講

泣いてしまった。勉強しながらシクシク。

私は日本音楽療法学会認定音楽療法士で、5年毎の資格更新がございます。

5年でコツコツと、

・音楽療法の臨床経験を重ね

・学会・研修会・講習会で勉強を続け(テスト受けたり)

・学会などで発表する

などのタスクがあります。各々のポイントを貯めていくことが資格更新の必須条件。

今週は、2つのオンライン講習を受けました。流山のお家にいながら、子どもたちが寝た後に講習会に参加できるのはありがたい!

①二俣 泉 先生/木下 容子 先生の

「ハッピーに生きる方法」を探すための科学-音楽療法士のためのABA(応用行動分析学)-

②恩蔵 絢子 先生の

認知症になっても変わらない力、高められる力〜脳科学から見た認知症〜

両方とも興味津々の内容で、事例を交えた分かりやすい講義で、とても勉強になりました。講座を受けて、響いたこと、考えたことを、とりとめもなく書きます!心が動いたので!心のままに!

認知症になっても変わらない力、高められる力〜脳科学から見た認知症〜

この恩蔵先生の講座は涙がもう、もう・・・

早速ポチらせていただきました。

脳科学者の恩蔵先生(東京大学大学院総合文化研究科特任研究員)は、実のお母様が65歳の時にアルツハイマー型認知症と診断されます。8年間介護をされ、昨年お母様はご逝去されたのですが、脳科学者として、脳の状態・変化を見てこられました。2023年1月に、お母様との時間に密着したドキュメンタリー、NHKスペシャル『認知症の母と脳科学者の私』が放映されたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

◾️認知症になっても感情は失わなれない!

以前、投稿した『認知症介護に役立つ9つの法則/症状の理解と負担軽減のポイント』にも書きましたが、海馬が大きく失われて、記憶の定着が困難になったとしても感情は失われない!

”むしろ、健常者よりも、アルツハイマー型認知症やMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)の方のほうが、他人の嫌な感情を感じ取る傾向があり、周囲の方がネガティブ感情を持っていると、アルツハイマー型認知症の方もネガティブな感情になってしまう。”

という研究結果があります。

(Virginia E. Sturm et al., Heightened emotional contagion in mild cognitive impairment and Alzheimer's disease is associated with temporal lobe degeneration. 2013 PNAS < b)

◾️海馬と記憶の不思議:海馬を摘出したHMさんの症例から

講座で、HMさんについてのお話がありました。

 

通称HMさん=ヘンリー・モリソン(Henry Molaison, 1926年2月26日 - 2008年12月2日)さんは、てんかんを治療するための手術で海馬を摘出した人です。彼の手術は、海馬が記憶を形成する上で重要な役割を果たすことを発見する上でとても重要な出来事でした。

 

てんかんを患っていたHMさんは、1953年に、てんかんの発作を軽減する目的で、内側側頭葉の大部分切除する手術、つまり海馬を丸っと切除する手術を受けました。この手術によって、HMさんのてんかん発作は軽減されましたが、同時に、新しい記憶を形成することができなくなってしまいました

HMさんは、手術以前の記憶は保持していましたが、新しい情報を覚えることができなくなり、また、新しいスキルを身につけることもできませんでした。

 

しかし、手続き記憶と呼ばれる、運動や習慣に関する記憶は保持していることが示されました。たとえば、『鏡にうつった星形を、手元を見ずに描く』という難しい課題では、HMさんは練習を重ねるごとに上達し、そのスキルを翌日も保持していました。

この事実は、手続き記憶が海馬とは異なる脳の領域に依存していることを示唆しています。

HMさんの例は、海馬が新しい記憶の形成に不可欠な役割を果たしていることを明確に示すものでした。また、運動・習慣は行動を重ねれば身につき上達する(練習したことを忘れても、体と脳が覚えている!)。

彼の症例は、その後の神経心理学の研究に大きな影響を与え、記憶のメカニズムの解明に大きく貢献しました。

 

海馬のないHMさんは、多くの脳科学者の実験に協力しています。驚いたのは、HMさん本人から「自分は人とは違う、新しいことを覚えられなことで人に迷惑をかけてしまっている、ならばせめて人の役に立ちたい」と、自ら進んで協力していたのです。

 

認知症になったとしても、自尊心、恥ずかしさ、人の役に立ちたいという気持ち、愛情・・・複雑な感情はずっと持っている。のです。

※HMさんについてのWikipediaはコチラ

 

◾️お母様の場合、音楽療法が認知症に最も効果があった

講座では、ピアノ講師で合唱が趣味だった恩蔵先生のお母様が晩年(重度になられてから)、音楽療法士と出会い、ご自宅でのセッションが始まり、先生は「音楽療法は認知症に最も効果があったもの」と話されていました。

会話もままならなくなり、独り言ばかりになっていたけれど、音楽療法士と出会い、セッションの中で驚くほど多くのレパートリーを歌い、昔と変わらぬ本格的な腹からの発声で表現豊かに歌いあげ驚いた!と。「この歌がお好きだったら、もしかしてこの歌もお好きなのでは!?」と音楽療法士が弾き始めると、イントロクイズのように生き生きと歌い始める(歌詞あり)お母様。どんどん2人の音楽とコミュニケーションが広がっていき。

音楽をやっている時は再び社会に戻り、かつてのお母様になり、自尊心を取り戻す…

そんな姿を見て、恩蔵さんご自身はお母様に対しての尊敬の気持ちが戻ったとのこと。また、音楽療法の後に注意力が上がり不安が減り・自信が回復していった、と。

訪問看護(リハビリ)で関わった90代の山田さん

このお話聞いて、今まで関わってきた認知症の方々が走馬灯のように巡りました。

特に、当時90代だった山田さん(仮名)を思い出しました。今は天国にいらっしゃいます。

山田さんは、訪問看護に拒否的な方で「今日は部屋に入れるか、入れないか…」という状態だったそうです。

ただ、この方は歌が好きで、ハーモニカが上手な方でした。

ということで、転職してきたばかりの作業療法士かつ音楽療法士のマツダ投入!となったわけでございます。

【認知症になっても失われないもの:感情そして音楽②】に続く

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著者

マツダ サチコ

日本音楽療法学会認定音楽療法士、作業療法士、社会福祉士。介護老人保健施設や認知症疾患医療センター、訪問事業所にて勤務。ダブルケアを経て、現在はWebマーケティング・制作会社にて勤務、ディレクションおよび制作を担当。個人事業としてもWeb制作、音楽療法を行なっている。

著者

マツダ サチコ

日本音楽療法学会認定音楽療法士、作業療法士、社会福祉士。介護老人保健施設や認知症疾患医療センター、訪問事業所にて勤務。ダブルケアを経て、現在はWebマーケティング・制作会社にて勤務、ディレクションおよび制作を担当。個人事業としてもWeb制作、音楽療法を行なっている。

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