音楽療法コラム

2024/12/25

認知症介護に役立つ9つの法則/症状の理解と負担軽減のポイント

はじめに

認知症の介護は、家族や介護者の多くの方が混乱や戸惑いを経験します。しかし、認知症の症状や特性を理解することが、介護の負担を軽減し、本人と家族双方が安心して過ごせる環境づくりのピースになります。本記事では、認知症の方に見られる「9つの法則」を紹介し、それぞれの具体的な対応策を解説します。

 

 

認知症介護の9つの法則と具体策

 

1. 記憶障害の法則

認知症の方の記憶障害には、「記銘力の低下」「全体記憶の障害」「記憶の逆行性喪失」という3つの特徴があります。

  • 記銘力の低下
    最近の出来事を覚えられず、何度も同じ質問を繰り返すことが特徴です。例えば、すでに伝えた内容を何度も尋ねられることがありますが、根気よく対応することが求められます。

  • 全体記憶の障害
    出来事そのものを忘れてしまうため、「さっき食事をしたのに、まだ食べていない」と訴えることもあります。この場合は、「もう食べました」と事実を伝えるのではなく、「これから準備しますね」等と否定せず柔軟に対応することが効果的です。

  • 記憶の逆行性喪失
    記憶が過去に遡って消えるため、本人が30年前の記憶を「現実」として生きることがあります。この特性を理解し、本人が「今いる時代」に合わせた会話をすることがスムーズな対応に繋がります。

 

2. 症状の出現強度の法則

認知症の方は、家族や主介護者のような身近な人に対して、より症状を強く出す傾向があります。これは、本人が介護者を最も信頼している証拠でもあります。一方で、外部の人や目上の人に対しては比較的しっかりと振る舞うことが多いです。

  • 対応策:症状が強く出ても、信頼と甘えの表れだということを思い出してください。そして一呼吸。必要に応じて医師や第三者を介入させ、負担を軽減することも大事です。

 

3. 自己有利の法則

認知症の方は、自分に不利なことを認めたがらない傾向があります。これは、自身の能力の低下を本能的に防衛しようとする心理が働いているためと考えられています。

  • 対応策:本人の主張を否定せず、冷静に受け入れる。事実ではないことであっても、正論を伝え続け火に油!という場面は実際とても多いです。「華麗なるスルースキルを身につける」とでも言いましょうか。「どのように場を収めるか」を優先的に考え、問題を長引かせないことが、お互いのダメージが少ないです。

 

4. まだら症状の法則

認知症の方の行動には、正常な判断による行動と、認知症特有の症状が混在しています。このため、「これは認知症の症状か、ただの忘れ物か」と判断に迷ったり、「こんなにしっかりしているのに、突然何を言っているの!?」と混乱することも少なくありません。

  • 対応策:不可解な行動を「これは認知症の症状だ」として割り切ることが、介護者の精神的負担の軽減になるかもしれません。

 

5. 感情残像の法則

出来事そのものは忘れてしまいますが、そのときに感じた感情は残ります。認知症の方がポジティブな感情を抱けるような対応を心がけることが重要です。

  • 対応策:「ありがとう」「よかったですね」など肯定的な言葉を積極的に使いましょう。本人の感情に寄り添い、安心感を与えことがとても大切です。必要に応じて柔軟な演技や嘘を交え、その場を穏やかに収めましょう。

 

6. こだわりの法則

認知症の方は、一つのことに執着しやすく、その考えを否定されるとさらに強くこだわる傾向があります。

  • 対応策:問題がない場合はそのままにしておくことも一手。気を逸らすために別の話題や関心のある活動に誘導することも、地域や専門家の協力を得ることで、より良い対応が可能になる場合も多くあります。

 

7. 作用・反作用の法則

認知症の方に対して強い態度を取ると、同じように強い反応が返ってくることがあります。穏やかで柔軟な対応が鍵です。

  • 対応策:笑顔、穏やかな表情、優しい口調で接することが大切です。急かしたり否定したりせず、ご本人のペースに合わせましょう。

 

8. 症状の了解可能性に関する法則

認知症の方の行動は、ご本人の過去の経験や感情に基づいていることが多いため、その背景を理解することで対応がしやすくなります。

  • 対応策:本人の過去の生活や価値観を理解するため、会話や観察を通じて情報を収集しましょう。本人の視点で物事を考え、適切な対応を行う・・・想像力が大事です。

 

9. 老化の速度に関する法則

認知症の進行は通常より速く、老化も2~3倍のスピードで進むと言われています。しかし、穏やかな生活環境と適切な介護によって、進行を遅らせることが可能です。

  • 対応策:軽い運動や趣味の活動、社会的交流を取り入れる。介護者自身も休息を取り、無理のない介護を心がける。

 

まとめ

わたしは作業療法士として認知症疾患医療センターで勤務していた時に、杉山先生のこの「認知症の9大法則」を知り、とても感銘を受けました。わたしは特にこの3法則↓が大きな学びでした。

  • 2. 症状の出現強度の法則

  • 5. 感情残像の法則

  • 7. 作用・反作用の法則

一番熱心に介護されている方に強い症状が出やすい。物事を忘れても感情は残る。キツく対応するとキツく返ってくるし、穏やかに接したら穏やかに返ってくる。この3つは、肝だと思っています。

このように、認知症介護は、症状の特徴を理解し柔軟に対応することで、認知症の方・介護者双方のストレスを軽減し、穏やかな日常を保つことに繋がります。

とはいっても、本当につらいです。特に、一番近くで関わるご家族の方は「分かっちゃいるが!!!」という現実、気持ちかと…。わたしの正直な気持ちとしては、簡単に「お気持ち、分かります」とか「寄り添いましょう」とは言えません。

ただ、このコツを時々思い出して、一呼吸、クールダウンする小さなきっかけになればと思い、書くことにしました。そして是非、積極的に様々な機関・プロの協力を得て、なるべく負担を分散してください。

 

参考文献:杉山孝博「認知症の9大法則50症状と対応策」法研

参照:公益社団法人「認知症の人と家族の会」webサイト:認知症をよく理解するための9大法則・1原則

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著者

マツダ サチコ

日本音楽療法学会認定音楽療法士、作業療法士、社会福祉士。介護老人保健施設や認知症疾患医療センター、訪問事業所にて勤務。ダブルケアを経て、現在はWebマーケティング・制作会社にて勤務、ディレクションおよび制作を担当。個人事業としてもWeb制作、音楽療法を行なっている。

著者

マツダ サチコ

日本音楽療法学会認定音楽療法士、作業療法士、社会福祉士。介護老人保健施設や認知症疾患医療センター、訪問事業所にて勤務。ダブルケアを経て、現在はWebマーケティング・制作会社にて勤務、ディレクションおよび制作を担当。個人事業としてもWeb制作、音楽療法を行なっている。

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